【黄昏オンステージ】
「さくらぁ♪さくら♪今咲き誇るー♪」
いつもの散歩コース
どこからか聞こえてくる
三線の音色と微かな歌声に
引き寄せられるように辺りを見渡すと
柵から一段下がったところに
歳の頃は、60前後か？
ひとりのおじさんが海を見ながら
気持ち良さそうに 唄っていた。。
先に見に行った家内の顔を見て
「三線？」と聞くと
少し様子がおかしい。。と
顔全体を使い私に告げていた。。
「おかしいんか？」と口パクで聞くと
絶対に誰にも気付かれないように。。と
「口にチャック」をして
私を制止するような仕草をしたのです。
恐る恐る柵から顔を出して覗くと
明らかに、「少し変わった人？」だったのです。
裸足になり、ビール缶を横に置き
夢中で唄っているのです。
少なからずギャラリーも居て
その歌声？を聞いているのですが
曲が変わり過ぎるのです。
それも明らかに歌詞が入り混じっていて
全く意味不明なのです。
しかし、ギャラリー全ての方が
なるべくなら目を合わせないようにしている中
私はじっと聞いていたのです。
何故か、その歌声に合わせた
三線の音色が心地よかったのです。
その音色や、おじさんの歌声を聞いていて
ひとり考えていたのは
この人の人生には一体何があったのだろう？
この人が声を上げて涙ながらに唄う想いは
何処にあるのだろうか？
きっと、抱えきれないほどの苦しみや
思うようにいかない人生が
そこにはあったのだろう。。
と勝手に思っていたのです。
決してオカシイ？人には
私には思えなかったのです。
その後ろ姿は全面青い海が何処までも広がり
たったひとりの何処か、もの哀しさを漂わす
「黄昏オンステージ」に見えたのです。
静かにその場を離れようとした時
後ろを振り返った、そのおじさんは
私の気配を感じたのか
三線を持ったまま、ぺこりと頭を下げたのです。
思わず、私も拍手をして答えたのです。
それが、私のアンコールと思えたのか
「さくら♪さくら♪今咲き誇る♪」
と更に大きな声で歌いだしたのです。
その後ろ姿を見て私は
「頑張ろう！そりゃ色々あるよ」
と 思ったのでした。。
最後までご愛読ありがとうございます。
しかし良い音色だったなぁ。。三線。。
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Posted at 09:39