【東京物語】
「こんなことやったら生きとる間に
もっと優しゅうしといたったら
良かった思いますよ」
海外の映画監督が選んだ
堂々ランキング1位の日本が誇る
1954年小津安次郎監督作
「東京物語」
私が幼い頃記憶にある
初めて見たモノクロ映画だったかもしれない
若かった母はとにかく映画が大好きだった
暇があったら私たち兄弟を連れて
映画館に通った
チャンバラ映画からヤクザ映画
恋愛映画、怪談映画
もうあらゆるジャンルの映画に連れて行かれ
じっと見ることも出来ない
席を離れウロウロする
落ち着きのない私でしたが
母親が映画を真剣に観る姿がなんだか好きで
映画を観るよりもこれほど感情豊かに
泣いたり笑ったりするのに驚くのですが
それ以上に母親曰く
子供の私の感情移入が
異常?に思えたらしいのです
当時は安価で
朝から晩まで数本の映画を観ることが出来
怪談映画を観たあとに恋愛映画
そしてヤクザ映画
とにかくずっと映画を観ている訳であります
売店なども充実していて
パンやお菓子はもちろん
お弁当まであったのです
映画館の中は今では考えられないけれど
タバコは普通に吸われていて
真っ暗闇の中で
煙がモクモクとなっていたのです
そんな母親が前の席にかじりつき
涙を流しながら観ていた映画が
「東京物語」だったのです
「えー映画やな。。
ほんまに。。うううう。。」
「お母ちゃんなんで泣いとん?
お母ちゃんなんで?」
「おまえも観てみい
こんな可哀想なな。。」
その母の涙を見ているだけで
声をあげて私は泣いていたと母から聞いた
最後のクライマックスで冒頭の
長年連れ添った奥さんを
笠智衆さんが偲ぶ場面から
汽笛が「ボー。。ボー。。」
その描写の繊細さが
モノクロで余計に沁みるのであります
今まで幾度も観てきたはずの「東京物語」
昨晩このような映画は大の苦手で
最後まで我慢して観ることが出来そうにない
変なドラマや変な映画しか観ない家内と
初めて「東京物語」を観た
気絶しそうなくらい退屈な始まりから
ゆっくり進んでいく時間。。
私はすぐに吸い込まれていくのですが
隣を見るとやはり予想通り退屈そうにして
我慢はしているのでしょうが
ここ!という良い場面で台所に立ち上がり
「お父さん何か飲む?」
今とちゃうやろ!! と、思ったのですが
その後も私の子供の時のよう
ウロウロするように思える家内が
亡くなった母が言ったみたく
「感情移入が凄すぎる。。」
と、言い放ち
私の涙を見てニコニコしている。。
アカン。
この人全然感情がちゃうわ
ま、それが我が家の平和の秘訣かもな
最後までご愛読ありがとうございます
しかし良い映画だなぁ。。
皆様もご機会あれば是非ご覧くださいませ
Posted at 09:39