【公衆電話】
自宅から坂をまっすぐ降り信号を渡ると
古びた公衆電話ボックスがある
しかし一度たりともあの電話で話しているのを
私は見たことがない
スマホが当たり前の時代
誰もがすぐにいつでもどこでも
電話をすることが出来る
今さらながら
便利な世の中になったと考えるのです
私が家内と付き合いを始めた頃
自宅で長電話などしていると
急に親子電話で私たちの話しに
あの超デリカシーのない父親が
わざと間違ったふりして急に割り込み
「まだ喋ってたんか(笑)」
などと言ってくるので
毎回家内に電話する時は
歩いて5分くらいの
公衆電話ボックスまで行っていたのです
10円玉をたくさん握りしめ
念のためと100円玉も2、3枚持ち
雨の日も風の日もほぼ毎日
電話ボックスに向かったのです
当時は同じような男の子がたくさんいて
ひどい時など幾人かの行列が出来ていて
やっと自分の順番が回ってきた!
と、電話をすると
かなりの確率で電話に出たのは
亡くなった身の動き軽い
義理のお父さんなのであります
しかしこのお父さんが
私は怖くて仕方なかったのです
超真面目、超寡黙その上娘を溺愛していたので
なんだか悪いこと?をしているような気がして
「あ、すいません。。
佳子さんいらっしゃいますか?」
たったそれだけを言うのに心臓がバクバクし
握りしめていた10円玉が
汗でびっしょりとなっていたのです
そんなことを微塵も考えない佳子さんは
毎回衝撃的に元気な声で
「ごめーん!(笑)
ちょっと出れなかったわ(笑)」
なんて今となっては想い出なのですが
当時はあまりにお父さんの電話に出た時の
なんとも言えない「間」が私は耐えきれず
「あ、お父さんが出た。。」
と、感じた時
何度か急いで電話を切り
そのままとぼとぼと自宅に帰ったことがあるのです
ひとり星を眺めながら
自分の勇気のなさを
情けなく思った記憶があるのです
今は電話でお話しすることすら
若い方は嫌がるとも聞きました
LINEやメッセージで充分
という時代になりましたが
私にはあの「間」
そして彼女と電話で話すことすらままならない
そんな時があったから
良かったようにも今思えるのです
もしあの坂道を下った公衆電話で
話している若者が居て
それをいつの日か見かけたら
「応援してるで!」
言ってしまいそうです
ドン引きされそう
最後までご愛読ありがとうございます
ちなみに公衆電話で佳子さんと
最長3時間話しました
「そやったっけ?」
佳子さんは幸せな方です
合掌。。
Posted at 09:39