【青い香り】
「大きく息を吸ってー」
早朝のラジオ体操
そらの散歩を兼ねて近くの公園に
人の気配など微塵も感じない静かな森の中で
小鳥の声が心地よくおはようの挨拶に聞こえる
「ピピピピ。。」
「チュチュ。。」
「ホーホケキョ。。」
いつからかこの公園で散歩
ラジオ体操が日課になっている
スマホからラジオ体操の動画を
朽ち果てたベンチの割れ目にスーッと挟み立て
そこそこの音量で流す
家内と横並びでラジオ体操が始まる
「お父さん
やっぱりラジオ体操って身体にいいと思うわ
よくよく考えたら凄い理にかなってるよね」
と、言いながら
無心に真剣にジャンプをしている
その姿を見て
この人は真面目なんだ。。
幸せな子なのだと改め思うのです
ひとつひとつの動き
手の伸ばし方や脚の動かし方を見て
最後のフィニッシュの時でも
どこかの体操の先生のように
真剣に深呼吸を行い
終わった後もその余韻を楽しみながら
「夏休みは毎日お兄ちゃんと
ラジオ体操に行ってスタンプもらってたんよ」
そうだろう、きっとそうなんだろう。。
その研ぎ澄まされた実直な
手の伸ばし方などを見ればわかる
夏休みに
ラジオ体操に無縁だった私とは全然違う。。
「ラジオ体操？
そんな早ように起きんでええ！
子供は寝とれ！」
父親の言葉それが全てだった。。
ラジオ体操のスタンプカードを全て押してもらい
自慢する友達が羨ましかった
「ふっきゃんもラジオ体操来たらええのに」
そんな誘いを断り続けていた
「なんでラジオ体操行ったらアカンのやろ？」
歳の近い兄に聞いてみた
「あれわな
ラジオ体操出来るんは幸せな子やから
サラリーマンとこの子だけや」
そう言われて
早朝ラジオ体操イコール「幸せな家庭の子」
という認識になったのです
それ以来
学校の授業などでラジオ体操が始まると
どこか斜に構えて
真面目にラジオ体操をすることが
出来なくなったのです
そんな歪んいる私を知ってか知らずか
家内は脇目もふらず
それはそれは真剣なラジオ体操を
進行していく訳でございます
「お父さん
こうやってもっともっと手を伸ばして
ハイ！！深呼吸！！（笑）」
凄い凄過ぎる。。
家内に言われて慌てて深く息を吸うと
今までの私を許しても良いと
鼻の中にゆっくりそれは本当にゆっくりと
「青い香り」が広がったのです
最後までご愛読ありがとうございます
しかしこのラジオ体操の姿。。
絶対に人に見られたくない。。
恥ずかし過ぎる！
真剣にご結婚をお考えの貴方
おせっかいな私達にお任せ下さい！
心よりお待ちしております。
Posted at 09:39