【ケセラセラ】
「このわんちゃん
犬種は何でございますの？」
「はい。チワワです。
少し太り過ぎましたけど。」
「あ。そうですの。可愛いわね。
ちょっと触ってよろしい？」
「ありがとうございます。」
先日、仕事が早めに一段落したので
夕方オフィスを閉め
家に帰ってからチョコの散歩に
運動不足の身体を少し戒めるために
歩いて近所を一周してみよう。。
と散歩に出たのです。
この辺りは
いきなり神戸らしく坂道を上がっていくので
気持ちが入らない？時は少々厄介？な
散歩道になる訳でございます。
いつもは車でビューっと走り
海沿いの公園に行くので
こうやって近所を歩くのは、久しぶりなのです。
「チョコ行くで！」
チョコも少し顔を斜めにして
不思議そうな顔をしたのですが
散歩や！と思ったのか
ちぎれそう？になるくらい尻尾を振って
コタツから出て来たのです。
「チョコ寒いで。。君も運動した方がええわ。」
寒いか？
そう思いながら玄関のドアを開け
ぼんやりと歩きながら
一軒、一軒の家の「その後？」を
目深に被った帽子の奥から眺めていると
さながら、怪しい通行人？にしか
見えないだろうなぁ。。
そんなことを考え歩いていると
おもむろに
先述の御婦人に声を掛けられたのです。
チョコの頭を撫でながら、その御婦人
「私、前まで４匹飼っていたんですのよ。」
「えっ。そうなんですか。素晴らしいですね。」
「ところが、全員亡くなっちゃったの。。」
「じゃぁ。今はワンちゃんは居ないんですか？
またお飼いになったらいいのに。」
「でもね。もう私おばあちゃんだから。。
幾つにお見え？」
幾つなんだろう？
こんな時は、女性には出来うる限り
「本当ですか！見えません！お若い！！」
そう言わなければならない。。
今迄の経験上、大変失礼かとは思いますが
自分から年齢のことを振ってくる場合は
先ず、その年齢には 見えないものなのだし
少し自慢？したい筈なのだ。。
以前
「幾つに見えますかな？」
と言った男性に
「76歳くらい。。ですか？」
と言うと
「わしは、未だ72ですわ。」
と気まずい空気になったのです。。。
ここは慎重に
一歩下がり、御婦人を見て
「75歳くらいですか？」
そう言いながら。。
実は、80歳には見えているのです。。
すると、御婦人、背筋を伸ばし
「おほほ！！90ですわ。
あなたお上手ね。ホホホ。。」
えっ？90歳？それは本当に見えないのです。。
背筋が伸び、しっかりと歩いている御姿は
どう見ても 90歳には見えないのです。
結果、近所を一周
御婦人と、同じコースを歩きながら
いろんなことをお話ししたのです。
三年前に、ご主人が亡くなったこと
子供は二人いらっしゃって
全員が東京で暮らしていること
ご主人が亡くなった後
飼っていたわんちゃんも
後を追って亡くなったこと。。
今では、ひとりで、お暮らしになっていて
毎日、水墨画を描いて
夕方お買い物に出かけ
誰のお世話にもなっていないこと。。
あまりに、お元気なので
「失礼かと思いますが、お長生きのコツ？は。。
すいません。あまりにお元気なので。。」
「そうね。ケセラセラね。」
「ケセラセラ？」
「なるようにしかならないのよ。
後は自分次第ね。
どんな時も 幸せ。。と思えば良いのよ。
決して不幸って思わないことかしら。。」
まさかケセラセラ。。
と答えが返って来るとは思わなかった私は
そのモダン？なお言葉に一瞬
声が詰まったのです。
そんな私に
「あなた大丈夫よ。とても優しいわ。
長生きしてるから。私わかるの。。
そして、あなた声が良い。」
90歳の御婦人に何故か褒められ
そこでお別れしたのです。
「それではごきげんよう。。」
ごきげんよう。。
そんな言葉を言う人に久しぶりに会ったぞ。。
「ケセラセラか。。」
最後までご愛読ありがとうございます。
いつも思うけれど
どうして私は一歩外に出ると
何か？が起こるのだろうか。。
そうか。。
「ケセラセラ」なのか。。これは。。
はい、おめでたい。。頭悪い。。私。
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Posted at 09:39