”ガサツなサンタ”
「寝てんのか？聞いとんちゃうか？
絶対起きてるわ、ほら今に笑うで」
「そんな事ゆうたりな！
こないしてサンタさんくるかも？
って思ってんねんから。」
「アホか！サンタなんかおるか！
がハハハハハは！！！」
「起こしたらアカン！
お父ちゃん、向こう行き！」
二段ベットの上の私を覗き込む、父親。。
当時、今みたく、クリスマスが当たり前では
無かった時代 年末になると
誰もが正月を迎えるにあたり
町が大きくうねる様に動いていた時代。。
私の家では、もちろん
「クリスマス」を祝う？など
「お洒落」な？家庭ではあり得ない
特別な感情が湧く父親では
到底無かったのです。
その上、時代には
かなり敏感な父親で
「カラーテレビ」「8ミリビデオカメラ」など
誰に相談する事もなく
「よっしゃ！今日からカラーテレビじゃ！」
と家族を集め 家中の電気を消し
「よー見とけ。これがカラーテレビじゃ！！」
と、家族が
「わぁああああああ。。」
と言うと
嬉しそうな顔をして
「大袈裟やな！ハハハハハ！！！」
と。。
間違っても
「なんぼしたん？これ？」
とは、卒倒しそうなので聞けない・・・
しかし、母親は誰よりも
「最新の家電」を見て
嬉しそうな顔をしていたのです。
洗濯乾燥機が出た時には
一番に買ってきたんじゃないか
と思えるほどで
「これ見てみぃ！乾くんや！！
洗濯干さんでええんや！」
と、ご満悦な顔。。
ところが、母親が
「こりゃええわ！」
と使っていたら翌月には
恐ろしいほどの
電気代が来たのでしょう。。
「こんなもん使うな！！
アホみたいに高つくわ！」
と言ったきり
全くもって、10年くらいは
ベランダに置きっぱになるという
無計画さ。。
そんな父親が
大きく動く町の変化を
知らない訳が無いのである。
高度経済成長の
日本のど真ん中で生きて来た
そんな時代に差し掛かり
「クリスマスソング」が流れたり
ケーキ屋さんに「クリスマスケーキ」が並び
お菓子が詰まった、サンタのシューズが
飛ぶ様に売れていたあの頃。
あの父親が、いくらガサツとはいえ
知らない訳は無いのです。
私は、まだ幼かったので
記憶は定かでは無いのですが
何故か、その時
二段ベットの上で息を殺して
父親の黒い靴下を枕元に置き
両親に「起きている」事をばれないか？
と目を閉じていた。。
下のベットで寝ている、一つ違いの兄と
父親が帰ってくるまで 小さな声で
「シー。。なんかくれるかな。。お父ちゃん。。」
と。。
「あっ！帰って来た！
ええか、なんかもろたら、サンタや！！！
って言わなアカンねんぞ！」
「わかった。。」
そして冒頭のくだりの
いつものガサツな感じで
(父親は私同様、一切お酒は飲めない。。)
入って来たと 思ったら
「寝てんのか？どうせ起きてるわ。
ハハハハハ！！！」
と言って来た
あの、声を殺して兄と約束した
「あっ！サンタや！」
と驚いたふりをする事もなく。。
「絶対、今に笑うで。。ほら。。ほら。。
サンタやで！！起きてみぃ！」
「わははははあはあははあ！！」
兄弟で我慢出来ずに
笑ってしまったのです。
「アホか！サンタなんかおるか！
皆んな起きろ！
お父ちゃんなテキ買うてきたから
皆んなで食べろ！早よ起きろ！」
父親は、クリスマスに鳥を食べるのでは無く
「肉屋が暇そうやったからな」
と 「鳥屋さん」では無く
分厚い牛肉を買って来たのです。。
それは、それで美味しかったものの
幼かった私にも兄にも
それ以来サンタへの夢を見る事も無く。。
時が過ぎ、私達の子供達が
それぞれの家族を持ち「クリスマス」を・・・
スマートにそれぞれの父親が頑張って
「サンタさん」を演じるであろう。。
きっと、あんなガサツなサンタでは無く。。
でも、この歳になってあの頃の父親
あの時代の「サンタさん」の方が
素敵な気がするのは
私だけなのでしょうか？
最後までご愛読ありがとうございます。
皆さんのサンタは、如何ですか？
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Posted at 09:44
