”さとる君の通知簿”
「さとる、見せろ、
みんなで見せ合い
したんやからお前も見せろ」
「いやや、いやや、
見せたくない」
さとる君は、
私達の仲間の一人で
悪ガキの中でも超がつく
“勉強嫌い?”
と言うより
勉強を捨てて?
いや、勉強する以前の問題で
中学1年の入学当初から
一際目立つ存在感で
先生もどうしていいのか解らず
「一体、さとるは
何しに学校に来てる」
とホームルームでの話題に
なるくらいで
本人はそんな苦労は
知ったこっちゃない!
と言わんばかりに、
毎日、学校に
遊びに来ているのです。
「さとる、ちょっとくらい
勉強した方がええで、
先生に怒られるで」
「なんで?
俺、勉強嫌いやねん、
勉強せんでもええでって、
オカンもゆうとったし
オトンも中学出たら
ペンキ屋継いだらええから、
今の間に遊んどけよって
言うてたで」
そうなんです。
当時はこんな中学生は
クラスに何人もいたのです。
中学を出て
親の仕事を手伝うという、
ただ義務教育だけは
出ておくという時代が。。。
それにしても、さとる君
全く勉強するそぶりもなく
「休みじかん」
「お弁当」
「放課後」
に全てを捧げているのです。
そんなさとる君
全く授業を聞く気もなく、
テストも白紙で出すのが
当たり前と思っているのが
自分なりの自慢出来る
ポリシーだったのですが
そんなさとる君
一学期が終わり
悪ガキ同志で通知簿を
見せ合いしていると
さとる君が
「見せて、見せて、
えっ?みんな数字が
書いてあるん?」
「はぁ?当たり前やんそんなん、
2とか3とか書いとうやろ?」
「俺、書いてないで。
先生が間違っとんちゃうか」
「どれどれ、見してみ」
「えっ!全科目、
印鑑押してるだけやで
1も2もないで」
「ホンマや、なんじゃこれ、
こんなん見た事ないで、
みんな見てみい」
そうなんです、
数字の評価1の下があるのです。
評価に値しないどころか
1と同等の扱いにも出来ない
先生の苦悩があったのです。
先生なりのユーモアだったのか。。。
それ以降さとる君は
少し授業を聞くフリをしだし、
なんと三学期には
九科目中五科目が
1に上がったので
「俺、通知簿上がってんで、
見したろか?」
と、どうだ!
と自慢するじゃないですか
そんなさとる君も
無事卒業して家業を継ぎ
今では、地元では
信頼のおける
ペンキ屋さんだそうですが
案外さとる君の生き方も
ありだと思うのは私だけでしょうか?
最後までご愛読ありがとうございます。
もうすぐ、通知簿の時期ですね!
あんまり、関係ないですよ
元気が一番ですね!