”遠い記憶”
「明日、またな。」
「おお。。」
当時16歳の私が
親友のM君と最後に交わした言葉.
腎臓に重い病を抱え、
透析に向かう病院の入り口までの
ごく普通のやんちゃな、
高校生二人にしか見えないであろうM君の
少しその日のはしゃぎ方以外は。。。
中学生で同じクラスになり、
その当時共通の趣味であった
釣りによく出掛け
「ふっきゃん、
今日は早よ帰ろ言わんといてな、
絶対大漁やし何か体調ええねん」
「大丈夫!
絶対途中でやめへんから、
そやけど、あんまり釣れんかったら
帰ろな」
「それがいややねん
な、な、おってな」
どんだけ、俺がすきやねん
と思いながらも結局はすぐに飽きる、
そんな私を
いつも笑顔で許してくれるM君
「俺、ホンマ、ふっきゃんと
同じ高校行きたいわ」
など言い出す始末。。
結果、本当に同じ高校に
ランクを落としたのか、
身体がもうその頃には
変調があり、学校も休みがちになり、
体育の時間には見学をする様になって
いたのです。
その頃、私もM君とは
別のグループの友達と帰る事が多くなり
何より、学校に顔を出す回数が
減っていったM君に少し距離を感じて
いたのでしょう。
しかし、体調が少し戻り
3日間連続で学校に通える事ができたので
昔みたいに、一緒に二人で下校したのです。
今、思えばひょっとしたらM君は
最後に学校に行って脳裏に焼き付けた
かったんじゃないかと。。。
彼の死に顔の色の白さは37年たっても
鮮明に覚えているのですが
しかし、時間と言うのは残酷で
あの時思った、苦い心の奥にある
宙に浮いたあの記憶が薄れるのです。
人間の哀しみには終わりがあるのだと。。。
最後までご愛読ありがとうございます。
M君の命日にて
Posted at 10:16