【陽のあたる場所に】
「490円!」
ついにここまで値が下がったか。。
その熊の置物を目にしたのはいつだったろう?
そらを連れてお気に入りの公園に行った帰り道
こんな場所に駅があるのか?と思う
それはそれは時代に置き忘れられたような
駅舎が眩しかった
バスのロータリーで待つタクシーの運転手が
あくびをしていた
もう一年になるだろうか?
その駅のすぐそばで
これまた昭和感満載のリサイクルショップ?
なんともいえない
ある意味時代に逆らった
凛とした佇まいに目を奪われた。。
「ちょっと見てみよか?」
ふらりと寄ったそのリサイクルショップが
実は値段の付け方が間違えてるんじゃないか?
私たちの物の見方を
根底から覆すほどの安さなのであります
街の最新のリサイクルショップの値段の
大袈裟ではなく半額?いやいやどう見積っても
4分の1くらいなのであります
その上、全ての商品のクオリティが高いのです
あんぐりと口を開けて値段を見ていた家内が
「やっす!!買おう!買おう!」
何を買ったか忘れましたが
家族が多い私たちに絶対必要な食器類を
数点買ったのです
その時
一番奥の棚に無造作に埃がかかった
「熊の置物」に目が止まったのです
「こんなん誰が買うんやろ?」
絶対に売れそうにない
その置物の前で眺めていると
家内がその場に現れ
「まさか買うんじゃないやろね?(笑)」
「さすがにこれはないわ(笑)」
とは言ったものの
一応値段だけ見てみようと置物を裏返すと
申し訳なさそうに 「980円」
微妙。。
これが高いのか安いのか?
しかし
もしこの置物を人から貰ったとしたら?
絶対に嬉しくないのは間違いない。。
そう思ったあの1年前のあの日
何故か亡くなった母の言葉を思い出した
「ええか、昭二
人間はな、ほとんどの人が
陽のあたらんようになってんねんやで
でもなそんな人が世の中を支えとんやで
だからどんな人間にでも
優しないと男とちゃうんやで」
それ以来、月に一度多い時は2度くらいを
通うようになっていた
その都度、私のお目当ては
あの「熊の置物」だったのであります
見るたびに値段が下がっている
生涯をかけてディスカウントされている
この置物が売れてますようにと願うのですが
全く売れそうになく
陽のあたる場所に出れそうにもなく
それでも威風堂々としてシャケを口に咥える姿が
私に「買って欲しい」と言っている。。
そんな風に先日思ってしまったのです
「よし買おう!」
そう言った私に家内は
ここまでの私のこのリサイクルショップでの行動
一目散に「熊の置物」に向かう姿を知っていたので
「買いましょうね。お父さん(笑)」
と、言ってくれたのです
はやる気持ちを抑えながら
やっと我が家に連れて帰り
どこに置くか?と
あちらでもないこちらでもないと
あらゆる場所に置いてみたのですが
これがどこに置いても抜群にしっくりこない。。。
どうせならと
この熊を我が家で一番陽のあたる場所
和室の前の庭のところに置くと
我ながらしっくりきたのです
「おおっ!ここや!」
勢いよく家内に言うと
ただただ苦笑いして立ち去ってしまった。。
それならば一番私に感性が近い娘にと写メを送ると
「ばり趣味悪い」
これもある意味予想通りの答え。。
一瞬息子に?と思ったのですが
違う意味で心配されそうなので
思い留まったことをあとで良かったと思い
たくさんいる家族で誰が
「お父さん!それイイ!」
と言ってくれるかと
頭で顔を浮かべたのですが
常識人ばかりのような気がしたその時
家内が私の背後に立ち
「お父さん。今度、こたろーが来た時
そこでオシッコしたりして(笑)」
一番想像出来てしまったシーンが浮かんだのです
誰か
「この熊の置物素敵ですね!」
って言ってくれたら
きっとこの「熊の置物」
陽のあたる場所を見つけたと思ってくれる
そんな日があればと願うのであります
最後までご愛読ありがとうございます
孫あたりに期待しようか?
じいじ血の濃い
あのいぶきくらいならあるかも?
Posted at 09:39