【よふど温泉②】
「北海道の地震。こりゃひどいわ」
風呂上がり
畳の休憩所で家内を待っている私の横で
先ほどの分速3メートルのおじいちゃんが
テレビを見ながらつぶやいていた
「こないなったらもう見てられんな」
そう言いながらも
食い入るようにテレビを見ていたのです
私はその休憩所に置いてあった
神戸新聞の記事を読みながら
おじいちゃんの動きや独り言を
聞き逃すまいと耳を集中していたのです
するとそのおじいちゃん急に立ち上がり
「あー喉乾いた。。」
と言ってやはり分速3メートルの足取りで
休憩所から出て行ったのです
ひとりになった私は久しぶりに
神戸新聞をゆっくり隅々まで読み
家内を待っていたのですが
いくら待っても家内が出てこないのです
時間にして40分くらい待っただろうか？
何かあったのか？
それとも未だお風呂に入っているのか？
いくら気持ちいい露天風呂だとしても
入湯してから２時間は経っている
さすがに少し心配になってきた
その時！
家内のあの高い声が
横にあるお食事処から聞こえてきたのです
「おばあちゃん、本当にいらないから！
本当にそんなんいらないから！」
いったい何があったのか？
慌ててその場所に行くと
白髪の車椅子に乗ったおばあちゃんが
家内にお金を渡そうとしているのです
その前に娘さんらしき人もいて2人で
「頼むからもらってちょうだい
おばあちゃんの気がすまないから
本当にお願いします」
そんな場面に私が行ったので
家内が私に気をとられた瞬間
そのおばあちゃんが家内のカバンに
お金を奥の方に忍ばせたのです
全く事情がわからない私が
「どうしたの？」
と聞くと
そのおばあちゃんいきなり私と家内の手を握り
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
生き仏さんや。ありがと、ありがと
こんな生き仏さんみたいな人がおるんや
ありがたい、ありがたい」
娘さんとおばあちゃんに拝まれたのです
聞くと車椅子でお風呂に入れてあげようと
娘さんも一緒に入ってきたそうなのですが
娘さんは仕事の途中だったのか服を着たままで
車椅子のおばあちゃんを入れようとしたらしいのです
それを見ていた家内はとても大変そうだったので
娘さんに
「私で良かったらお任せ下さい」
と おばあちゃんの身体を洗い
そのまま 一緒にお風呂を共に過ごしたそうです
娘さんはあまりにおばあちゃんが
楽しそうにしていたので外で待っていたそうです
94歳のおばあちゃんからたくさんのお話を聞いて
家内にしたらとても楽しい時間だったそうです
お風呂上がりには
「私たちは前世で親子やったんかも」
娘さんの前で言われた時は
少し困ったそうですが
家内にとっては困った人を助けるのは
当たり前のことをしただけなのにと
「南無阿弥陀仏」
されるほどのことじゃないと思ったそうです
お別れする時も私たちに向かって
手を合わせて見送る2人を背後に感じながらも
俗物な私は
いったいいくらお金をもらったのかが気になり
「いくらくれたんやろ？」
と家内に聞くと
「わからない」
と言うので 少し早足で車に戻りカバンの奥を除くと
「2,000円！！お母さん2,000円！
南無阿弥陀仏。 南無阿弥陀仏。ラッキー！」
呆れたような顔をした家内にこれじゃいけないと思い
少し静かなトーンで、さも喜んでいない顔をして
「いいことしたな、喜んでもらえたな」
「うん。喜んではった」
結果、その2,000円を元に
帰りの道中で立ち寄った中華料理で
酢豚、春巻き レバニラ炒めに使わせていただき
自宅に帰ってきたのは夜の8時前でした
「よふど温泉楽しかったね」
家内が幸せそうな顔をしたので
「よほど楽しかったな」
ダジャレのつもりで言ったのですが
全く聞いていなかったのか
完全にスルーされたのです ま。
いいか（笑）
最後までご愛読ありがとうございます
「南無阿弥陀仏」「南無阿弥陀仏」
そう言えばギャラリーみんな見てたなぁ。。
真剣にご結婚をお考えの貴方
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Posted at 09:39