【箕面の大滝】
「確かSはまだベビーカーに乗ってたね
Rは二年生くらいだったかな
Nも幼稚園の年少くらいやったかな？」
坂道を登りながら
家内が遠い昔を愛しむように登って行く
少し歩くと足元がおぼつかなくなるチョコを
いつものようにバックにちょこんと顔が出るように
「ハイどうじょ」と言って抱え上げる
「もう30年近くになるか？」
「早いね」
「箕面の滝見せたろ！」
「やった！お出かけ！お出かけ！」
長男がはしゃぎ
娘が遅れまいと私のあとをついていく
次男はただベビーカーに乗せられて
窮屈で賑やかな車の家内の腕に抱かれ眠っているのだ
記憶はおぼろげだけれど
きっとそんな光景があったのだ
若くして３人の子供を抱え
満足に遊びに連れて行くことも出来ないくらい
恥ずかしながら私たちは貧しかった
しかしそんな貧しさに負けないくらい
私たちは明るかったのだ
「お父さん、今度の休日の予算は3.000円
これが精一杯（笑）」
「3.000円か？（笑）わかった
じゃぁこの予算で目一杯遊ぶか！（笑）」
私の休みを
待ちわびているような目で見る子供たちを
なんとか楽しませようと
私は今度のお出かけまで一週間
頭をひねるのであります
今みたくインターネットで
情報が取れる時代でなかったので
両親に連れて行ってもらった
自分の幼い頃の記憶を蘇らせ
その記憶を頼りに車を走らせるのであります
もちろんコンビニなんか無い時代ですし
飲み物を買うのも予算オーバーな気もしたので
重い水筒を持って出掛けたような記憶があります
箕面駅から少し離れた場所に車を路上駐車し
箕面の大滝へ続く参道を
ベビーカーを押し歩いていると
箕面の山にはお猿さんがたくさんいて
なんだかわからないのですが
私たち家族のあとを追ってくるのです
通常ならば箕面駅から30分くらいで
大滝の方に到着するのですが
幼い子供を連れて歩いていると
１時間以上はかかったと思うのです
「すごい！すごい！
お父さんすごいね！綺麗ね！」
目の前に広がる大滝を見て
そんな家内のリアクションを期待したのですが
目が離せない子供たちを連れ道中が疲れたのか
「やっと着いたね（笑）あーしんど。。」
「どや？綺麗やろ！？」
と得意満面の私の声をかき消すように
「アカン！そっち行ったら危ない！！
Rそんなとこ登ったらアカン！！」
「オシッコ行っとこかSくん」
「ダメ！！走らない！！N！！」
今思えば当時の家内は
滝をゆっくり眺めるような余裕なんかなく
必死過ぎるほどの子育てに追われていたのです
箕面の滝が綺麗ね。。。。というより
「どうかこんな父親みたくならないように。。」
と願っていたのか
今では想像出来ないくらい
それはそれは躾に厳しい母親でございました
そんな昔を思い出しながら
家内と今度はゆっくりと参道を歩いたのです
「お父さん綺麗ね、すごいね！気持ちいいね」
初めて大滝を見たかのようなリアクションだったのです
「今度皆んなともういっぺん来ようか？
しんどいかな？」
30年経ってもやはり
子供たちのことをパッと頭に浮かべ考える家内
母親には絶対に勝てないと
改めて実感した箕面の滝でのことでございました
最後までご愛読ありがとうございます
総勢14人か。。
今度は予算3,000円ってことはないか（笑）
真剣にご結婚をお考えの貴方
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Posted at 09:39