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お彼岸の日に。  [2015年03月21日]
”お彼岸の日に。”
 
 
急な坂に
 
車のアクセルを
 
軽く押し込む様に踏み込むと
 
180度くらい曲がるカーブの先に
 
母親が眠る墓地が見えて来る。
 
 
 
お彼岸の春の暖かなこの日
 
多分、母親が生きていたら
 
抱えきれない程の供花と
 
お墓を掃除するための
 
あらゆる道具?を持って
 
丁寧に それは、本当に丁寧に
 
お墓を磨きあげたであろう 
 
お彼岸の日。。
 
 
 
何度か一緒に生前来たのですが
 
お墓に向かって気長に話かける姿は
 
それは、あたかもそこに人が居る
 
気配を感じさせる程で。。
 
 
「しょうじ。もういっぺん水汲んで来て!」
 
 
と言われ、バケツを二つ持たされて
 
汲みに行くのですが
 
歩く度にバケツの中の水が
 
揺れ溢れるのです。
 
 
その度に、何故か
 
「溢してはいけない。。」
 
とバランスを取りがら 慎重に歩くのですが
 
なかなか思う様にはいかない。
 
 
やっと、運んで来たら母親が
 
私の不器用な歩き方を見て
 
それはそれは、豪快に笑うのです。
 
 
「ハハハハハ!!!」
 
 
少し汗ばんだ顔でお墓に向かって
 
 
「ほんまオモロイやろ?この子!」
 
 
と笑うのです。
 
 
「この子って。。幾つや思ってんねん?」
 
 
「アホ!(笑)
 
 いつまでもお母ちゃんにとったら
 
 子供や、末っ子の甘えたや(笑)」
 
 
そう言いながら、今度は
 
お墓の周りの雑草を
 
「これでもか!」
 
みたく抜き始めるのです。
 
 
「ちゃんとしたらな可哀想やからな。
 
 あんまりしょっちゅう来れんからな」
 
 
と黙々と抜き続けるのです。
 
 
そんな母親を見ながら
 
ふとその時、私は思ったのです。
 
 
「オカンの中では、未だ死んで無いんや。。」
 
 
と思ったのです。
 
 
死に逝った墓で眠るであろう死者に対し
 
今自分が出来うる全ての事をし、
 
今ある全ての出来事を
 
延々と語りかけるその姿は
 
決して手を抜く事が許されない母親にとって
 
それはそれは大切な事であったのです。
 
 
母親の人生には、今思えば
 
一切の手抜きの無い鋼鉄や鋼の様な
 
一途な生き様がそこに
 
集約されている気がして。。
 
 
そんな母親が亡くなり
 
早いもので、もう二年が過ぎたのです。
 
 
昨日、この日に行こうと決めていた
 
このお墓詣りの日
 
 
朝から、太陽が燦々と照らす
 
最高のお天気になっていたのです。
 
 
「オカンらしいな(笑)」
 
 
と言うと家内も
 
 
「全く(笑)」
 
 
と言いながら
 
お墓の周りの雑草を抜き出したのです。
 
 
「お父さん、水。もういっぺん汲んで来て!」
 
 
と言いながら語りかけている。。
 
 
「あのね、K君今年から小学校やで
 
  おばあちゃん。。それからね。。」
 
 
歩き出した私の背後で
 
大きな声で語っている。。
 
 
「オカン、心配ないわ。。
 
 受け継がれてるわ(笑)」
 
 
最後までご愛読ありがとうございます。
 
 
それでも水が上手く運べない。。
 
アカンなぁ俺は。。
 
 
「いつまでも俺は子供か?オカン。。」
 
 
☘☘

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Posted at 09:39